『改葬』はお墓の引っ越し
改葬(かいそう)はお墓の承継者が行う他に、継ぐ人がおらずに無縁墓となったお墓の遺骨を、墓地の管理者が合葬墓へと改葬することもあります。
遺骨のみ改葬して転移先に新しく墓石を用意する人が全体の7割、遺骨と一緒に墓石も改葬する人は全体の3割です。
改葬にかかる費用
お墓の改葬には新しいお墓を建てるのと同程度の費用がかかります。
新しいお墓の用意
改葬を行うには関係する市区町村に申請をして許可を得ることが必要になるため、勝手に移すことはできません。
申請を行うにもまず新しいお墓を使用できることが分かる書類を用意する必要がありますので、引っ越し先のお墓または納骨堂などの算段をつけ、『墓地使用許可書』や『受入証明書』などの書類をもらっておく必要があります。
新しいお墓を用意した場合、墓地や納骨堂の使用料、お墓を建てるなら墓石代や設置工事費用、開眼供養のお布施などが必要になり、平均しておよそ200万円ほどかかると言われています。
開眼供養(かいげんくよう)
浄土真宗ではお墓や仏壇に仏様の魂が宿るという考え方をしないため、開眼供養はありません。御移徙(おわたまし・ごいし)等と呼ばれる入仏法要を行います。
古いお墓の解体
各辺の長さが1尺(約30.3cm)の立方体を1才(いっさい)と言います。
墓石に使われる一般的な青御影石の1才あたりの重さは約80kg。
お墓は軸石(家名等を刻む部分)だけで100kgを超える重さがあり、土台などの他のパーツを合計すると1トンを超えることも珍しくありません(黒御影石でできたお墓はさらに重くなります)。
お墓の施工には当然重機が必要になります。
ということはつまり、お墓を解体する場合も重機が必要です。
処分費用 = △㎡ × 10万円
墓石の処分費用の目安は1㎡あたり約10万円と言われます。
また一般的な墓石の処分にかかる日数はおおよそ1~2日ですが、これらは重機が入ることができる場所で、石材の量がさほど多くないケースが前提となります。
一般的なお墓の区画面積は1~1.5㎡となっているため、その範囲であれば10万~15万円程が相場の価格と言えるでしょう。
墓石まで重機が入れない場所だったり、土中に基礎が埋まっていたりすると作業工程が増え、通常より時間もかかるし費用もかさみます。
墓石撤去作業の前には閉眼供養(墓石から仏様の魂を抜く儀式)も行い、そのためには僧侶に読経してもらってお布施を用意しますので、それらも合わせると古いお墓の解体には最低でも20万円ほどはまずかかるとみていいでしょう。
閉眼供養(へいがんくよう)
浄土真宗では教義の違いから閉眼法要にあたる儀式のことを遷仏法要(せんぶつほうよう)と言います。
お墓を引っ越すことの効果
遠方へのお墓参りにかけていた移動時間を短縮できたり、現代人にとっては煩雑に感じる菩提寺とのお付き合いのあれこれを解消できたり、負担が減ることは多いでしょう。
引っ越しさせてもらえない!?
寺院墓地ではお墓の引っ越しがトラブルになる場合も……
お寺が管理する寺院墓地では、お墓が1つなくなることは、檀家が1つ減ることと同義です。
お寺にとって檀家が減るということは、葬儀・法要のお布施や喜捨などの収入源が減ることに直結しますので、いい顔をしないところも多くあります。
寺院墓地から改葬したい場合は、時間をかけて入念に根回しすることが重要になります。
いっぽう霊園や公営墓地は料金形態が明確ですし引き留められることもありませんので、寺院墓地のようにトラブルになることはありません。
知っておきたい改葬の手続き
step
1新しいお墓を用意する
「墓地使用許可書」「受入証明書」など、新しいお墓を使用できることが分かる書類をもらっておく。
step
2「改葬許可申請書」を用意する
現在のお墓がある市区町村役場で「改葬許可申請書」をもらう。
step
3「埋葬・埋蔵証明」をしてもらう
一般的に改葬許可申請書には「埋葬・埋蔵証明」欄があるので、ここに現在のお墓の管理者の署名・捺印をもらう。
step
4「改葬許可証」をもらう
現在のお墓のある市区町村役場に「改葬許可申請書」「埋葬・埋蔵証明」を提出して、「改葬許可証」をもらう。
step
5遺骨を取り出す
全ての遺骨を取り出す場合は閉眼供養を行う。
step
6新しいお墓に納骨する
新しいお墓の管理者に「改葬許可証」を提出し納骨する。新しいお墓に納骨する場合は、開眼供養を行う。